歯医者さんの歯の教室

2017.09.30更新

歯周炎の特徴
歯周炎は歯肉に初発した炎症が、歯根膜や歯槽骨など深部歯周組織に及んだものである。
歯肉炎が歯周炎に進行するには、通常、ある程度の量のプラークが長期間にわたり存在することが必要である。これには、プラークを増加させたり、プラークの除去を困難にする因子、すなわち局所修飾因子が大きく関与する。
歯周炎が進行する速度は、比較的ゆっくりで、数年単位で進行する。しかし、早期接触などにより異常に強い咬合力(外傷性咬合)が加わって咬合性外傷を合併したり、特殊な細菌に感染したりすると、破壊は急速に進行する。
さらに、全身性因子として生体の防御の強弱も影響する。例えば、糖尿病による抵抗力の低下(白血球の機能低下など)が歯周炎の進行を速める。
具体的な特徴は以下のとおりである。

歯肉炎が歯周炎に進行し、歯根膜・歯槽骨が破壊される
プラークによって生産される有害な刺激物質の侵入が生体の防御力を上回り、歯肉の炎症性破壊が深部歯周組織(歯根膜や歯槽骨)に及んでいる。プラークが持続的に歯周組織に作用し、歯根膜線維の破壊・歯槽骨の吸収が生じる。

アタッチメントロスが生じ 真性ポケット(歯周ポケット)が形成される
歯肉と歯との付着(結合)機構が破壊され、歯根に付着する歯周組織の量が減少(アタッチメントロス)する。歯肉の接合上皮(付着上皮)はセメントエナメル境よりも根尖側に移動し、歯肉は歯根から剥離して真性ポケットが形成される。臨床的には、ポケット底部がセメントエナメル境より根尖側に位置する。

歯周ポケットが深くなると歯肉縁下の細菌が増殖し、炎症を持続し進行させる
ポケット内は細菌が増殖しやすい環境であり、多量の有害な細菌の産生物がポケット上皮を通過して歯肉内へ入り込む。さらに、炎症が高度になると細菌自体が歯肉結合組織の内へ侵入する。このような状態から、歯周炎は歯周病関連菌の感染症であるともいえる。とくにPorphyromonas gingivalis(P.g.)やActinobacillus actinomycetemcomitans(A.a.)などは有害な酵素や内毒素を待ち、急速に歯周組織を破壊する。

局所の修飾因子(プラークの除去を困難にする因子)が存在すると増悪しやすい
口腔清掃を困難にするプラーク増加因子(歯石、歯列不正、小帯異常、不良補綴物など)が存在すると歯周炎は発病し増悪する。ひとたびポケットが形成されると、ポケット内部は患者が自分で清掃できないためプラーク増加因子となり、さらに歯周炎を進行させる。

咬合性外傷が合併すると急速に増悪する
外傷性咬合(早期接触、強い側方圧、ブラキシズムなど)により生じる咬合性外傷が、歯周炎と合併すると歯周炎は急速に進行する。臨床的には垂直性骨吸収、骨縁下ポケットが形成されやすい。したがって、外傷性咬合は歯周炎の重要な修飾因子の1つと考えることができる。

全身性因子は修飾因子として働く
細菌感染に対する抵抗力を低下させる全身性疾患(糖尿病や血液疾患 特殊な遺伝性疾患など)や免疫力の低下は、細菌に対する抵抗力を弱め、歯周炎を進行させる。
全身因子では宿主の防御機能を損なう遺伝性要因も指摘されており、要因の一部は解明されている。

部位特異性が著明である
同じ患者の口腔内でも、部位により歯周炎の進行度に大きな差異がみられる。これは前述した局所の修飾因子や歯の解剖学的特徴、増殖している細菌の質(種類)などによる。

歯周炎には慢性期と活動期がある
歯周炎は慢性疾患といわれるが、その進行は常に一定速度で進むのではなく、活動期すなわち急速に進行する時期がある(活動期か慢性期かを1回の検査で診断する方法はまだ確立されておらず、通常、アタッチメントロスや歯槽骨の吸収が短期間で急速に進行した場分を活動期と呼んでいる。しかし、前述した(1)~(7)の歯周炎の特徴を考慮し、ポケットからの排膿と出血、ポケット内細菌叢、根面の状態、咬合性外傷、全身状態などを調べることにより活動期を推定することが可能である)。

歯周炎が重度になると悪循環が生じ、さらに急速に進行しやすい。
ポケットが深くなると毒性の強い嫌気性のグラム陰性菌が増加する。さらに、骨吸収などにより支持力が低下すると2次性咬合性外傷が生じ炎症と合併して進行を早める。

歯肉膿瘍や歯周膿瘍を形成することがある
一般に歯周炎の急性発作とも言われるもので、細菌が歯肉や歯周組織の深部に侵入増殖し膿瘍を形成する。通常、歯周組織の防御機構が低下している場合、例えば、ポケットが深くて咬合性外傷を合併したり、風邪などにより全身状態の低下した時、歯肉縁下のスケーリング・ルートプレーニングが不十分な場合などに生じやすい。

原因の除去により歯周炎は改善する
軽度の歯周炎は基本的な原因除去療法で健康を回復することが可能である。一方、重度の歯周炎は治療が困難となり、複雑な治療を必要とし、しかも完全な回復は不可能な場合が多い。現在の治療技術では失われた歯周組織の再生は一般に難しい。
しかし、完全な健康回復や再生が不可能(深いポケットが一部に残存する場合など)でも、患者の熱心なプラークコントロールと歯科医師のメインテナンスにより、歯を保存し機能させることは十分可能である。

再発の危険性が高く、メインテナンスが不可欠である
初発因子(原因)であるプラークが口腔内に常に存在するため、再発の危険性が高く、治療により回復した健康を維持するためには、患者を定期的にリコールしてメインテナンスを行う必要がある。

歯周病とは
歯周病は歯周疾患とも呼ばれ、歯周組織に原発し、歯周組織を破壊し、その機能を侵す病的状態をいう。ただし、歯周組織を破壊する新生物(悪性腫瘍など)や代謝疾患は含まない。
歯周病の初期症状は歯肉の発赤、腫脹であり、さらに病変が進行すると深部組織に破壊が進み、歯と歯肉の接合部分が破壊され歯周ポケットを形成し、歯根膜の破壊、歯槽骨の吸収が生じ 歯の動揺が顕著となり、歯を喪失することになる。これらの変化の多くは、初期段階では痛みなどの自覚症状に乏しく、多くの患者はかなり進行してから異常に気がつくことが多い。抜歯される歯の約半数近くは歯周病が原因である。
歯周病のほとんどは、プラーク中の細菌が原因(初発因子)となって生じた炎症性疾患であり、歯肉炎と歯周炎に大別される。歯周病にはこの他にプラークと関係なく、強い咬合力によって引き起こされた咬合外傷が含まれる。
プラークは歯、歯肉、修復物、補綴物などに付着する多数の細菌から構成されている。
なお、これらのプラークを構成する細菌の中で、特に歯周病変に強く関与していると考えられる細菌を歯周病関連菌と呼んでいる。
個々の歯や患者間における歯周炎の発症と進行の程度の違いは、原因因子である歯周病関連菌の質と量、それらの作用時間、さらには患者側(ホスト側)の要因としての抵抗性あるいは治癒力との相対的バランスによると考えられている。

歯肉炎の特徹
歯肉炎は歯肉にのみ炎症病変が生じたもので、歯根膜や歯槽骨は破壊されておらず、歯周炎の前段階といえるものである。しかし、歯肉炎がすべて歯周炎に進行するわけではなく、歯肉炎のまま長期間維持されるものもある。具体的な特徴は以下のとおりである。
初発因子はプラークである
口腔清掃を中止してプラークが付着すると2~3日で肉眼でも歯肉炎の発生を見ることができる。

炎症は歯肉に限局している
歯根膜や歯槽骨には炎症が及んでいない。しかし、歯肉炎を放置すると炎症が歯根膜や歯槽骨に及び、歯周炎に進行する危険性が高い。

仮性ポケット(歯肉ポケット)が形成されているが、アタッチメントロスはない
歯肉が歯と付着する位置はほとんど変わらずに、歯肉が炎症により腫脹したり増殖することによって仮性ポケット(歯肉ポケット)が形成される。臨床的には、ポケットの底部はセメントエナメル境より歯冠側に位置する。すなわち、歯周組織が歯と付着し支持している量(これをアタッチメントと呼んでいる)は減少していない。

局所の修飾因子(プラークの除去を困難にする因子など)によって増悪する
口腔清掃を阻害したり表面が粗造でプラークを付着・増加させる因子、例えば歯石、不良補緩物、歯列不正、口呼吸などによって増悪する。

外傷性唆合(早期接触、ブラキシズム、側方圧など)によって増悪することはない
外傷性咬合によって病変が生じるのは歯根膜と歯槽骨であり、歯肉は直接影響を受けない。したがって、歯肉炎が外傷性咬合によって増悪することはない。

全身性の修飾因子が関与しているものもある
最初はプラークによって引き起こされるが、全身性因子あるいは特殊な局所因子に強く修飾されている歯肉炎がある。これらは通常関与する修飾因子の名がつけられており、妊娠性歯肉炎、フェニトイン(ダイランチン)性歯肉炎、白血病性歯肉炎などがある。しかし、これらは妊娠のため、あるいはフェニトイン(抗てんかん剤)服用のために歯肉炎が起こるのではなく、プラークによって引き起こされた歯肉炎が、妊娠や薬の服用により修飾されて増悪しているのである。プラークによる歯肉炎が存在しなければ、このような歯肉炎は生じてこない。

プラークを除去することにより改善する
口腔清掃の徹底により初発因子であるプラークを取り除くことにより、著しく改善する。さらに修飾因子を取り除くことにより、臨床的に正常な状態に回復する。

硬い歯ブラシや食物、義歯、薬物などプラーク以外の因子により歯肉が傷つくことがある
これらは歯肉外傷とも呼ばれ。例外的な歯肉疾患である。

咬合性外傷の特徴
咬合性外傷は、外傷性咬合(過度な咬合力)によって引き起こされた歯周組織の外傷であり、プラークによって引き起こされる歯肉炎及び歯周炎とは異なった歯周病変である。
咬合性外傷を引き起こす原因となる咬合を外傷性咬合と呼び、その代表は早期接触、ブラキシズム、側方圧、舌と口唇の悪習癖、食片圧入などである。

投稿者: 大塚歯科クリニック

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